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「息子ジェフリー・ダーマーとの日々」を読んだわけだが、
息子が連続殺人鬼として法廷で裁かれる、という衝撃的な体験をしたライオネル・ダーマーが、苦悩を延々と書き連ねた本である。 父親になる人は一読すべしと、誰かが言っていたので読んでみた。 息子・ジェフリー・ダーマーは、1980年代から90年代にかけて、アメリカのミルウォーキーで17人の男性を殺害したシリアルキラーだ。 「ミルウォーキーの食人鬼」の異名を持つ。 1960年、ライオネル・ダーマーと妻・ジョイスとの間に長男「ジェフ」が生まれる。「ジェフ」は、明るく活発な子供で健全に育っていくように思えたが、成長するにしたがって無気力で内向的になっていく。この頃のライオネルは、博士号をとることにかまけて家を留守にし、家族や夫婦の問題から逃避していた。 「ジェフ」が高校を卒業する頃には、ライオネルとジョイスの夫婦関係は修復不可能となっていて双方共に家を出てしまった。 家には「ジェフ」1人なわけだが、彼は、このころ最初の殺人を犯した。 結局、妻と離婚したライオネルは、新しいパートナーを連れて家に戻ってきた。アル中で、何事にも無気力な人間になってしまった「ジェフ」を学校に行かせたり職につけようとしてみたり、ライオネルなりに努力をしてみたが、結局うまくいかなかった。 「ジェフ」は、自暴自棄となり軽罪で何度も警察に逮捕される。ライオネルが、身許を引き取りに行くと、決まって「ごめんよ、とうさん」と言うが、「ジェフ」が何に対して謝っているのか、ライオネルには、もうわからなかった。 その後、「ジェフ」は職も住所も転々としながら、「殺人+解体+いただきます」を繰り返す。 ゲイバーなどで、気に入った相手に声をかけて連れ帰り、睡眠薬を飲ませて昏倒したところを絞殺するのだ。 ライオネルは、常に「ジェフ」のことを気にかけてはいたが、「ジェフ」の恐るべき行為についてはまったく気付かなかった。 「ジェフ」は、18人目を手にかけようとしたところで逮捕された。 警察から連絡を受けたライオネルは、最初は「ジェフ」が殺人事件の被害者になったのだと思った。しかし、「ジェフ」の身は問題ないとのこと。ということは、加害者なのか? 「ジェフ」が人を殺すなど、ライオネルには到底信じられることではなかった。しかし、裁判で彼の息子の行為が明らかになり、ライオネルは深い衝撃を受ける(というか普通の人は衝撃を受ける)。 読み始めた時の感想は、「すごく、いたたまれない」だ。 ライオネルの中にある、幼い「ジェフ」の思い出は、かつては美しいものだった。しかし、幼い「ジェフ」は、すでに狂気を内に秘めていたのかもしれない。あのときは気づかなかったが、さばいた魚の内臓を見る目や、路上の小鳥の死骸を見る目にすでに狂気が宿っていたのかもしれない。 成長した「ジェフ」が歪んだ妄想を抱いていることを知った今、思い出の「ジェフ」も歪んでしまったのだ。 ということで、読み始めは、 ライオネルは、気の毒なお父さんという感じだったのだが、読み進めるうちに、ライオネルの「ジェフ」に対するスタンスがおかしい事に気付いた。父子とは思えない距離があるのだ。 彼は、本当に自分の子供を愛しているのか?「ジェフ」を定職につけようとしたり、学校に行かせようとしたり、父親らしい行為をしているようだが、なんだかおかしい。 と思ったら、本人にもある程度の自覚があるらしく、「父親を演じる」ことしかできなかったという記述があった。 また、ライオネルは子育てについて後悔している部分もあるようなのだが、イマイチ痛切な感じを受けない。と思ったら、自分が感情の起伏に乏しい人間であるということを認める記述もあった。 そして、読み終わった感想は、この親にして、この子ありだ。 そんなライオネルは、世の父親たちに警告を発している。 「子育てに気をつけろ」だそうだ。「ジェフ」みたいになる前に子供を狂気から救えってことだね。 おっしゃるとおり。 ライオネルがこの本で得る収益は、被害者の救済に使われていた。 現在は、被害者との訴訟に巻き込まれて、寄付もままならないらしい。 「息子ジェフリー・ダーマーとの日々」 翻訳 小林 宏明 原題 「A Father's Story」 原著 Lionel Dahmer
by g-10chan
| 2007-01-14 07:49
| 読書
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